富士登山サイコー⁉︎
うちのおかんの生態については前回紹介させていただいた。
私が小学生の頃、うちのおかんと父と弟と四人で富士登山をしたことがある。
富士登山をしたことがある方はよく分かると思う。
登山口の売店に金剛杖と昔話のかさ地蔵で出てくるわらの帽子が売っている。
金剛杖はとても人気がある。
ただし、帽子のかさを被っている人は少ない。
やっぱりうちのおかんはかさを被りたがるよね。
もちろん、母一人だけかさ被るよね。
そして、強引に家族の記念写真を撮らされるよね。
まぁ、そこでもなぜか富士山にちなんでなのか指を一本立てちゃってるよね。
お決まりポーズ取っちゃうよね。
そんな調子で登りはじめた。
弟はすぐに高山病にかかりリタイア。父は弟に付き添って下山した。
おかんはなぜか元気で、私について来た。
小学高学年生だった私は、体力が有り余っていた。
登山は全く苦痛ではなく、スイスイと登っていた。
8合目辺りから何度も、しんどいしんどい、と言うおかんを、少し進んではジッと待つ、を繰り返していた。
何度か私はおかんに、大変やったら、降りる?と聞いたが降りない。
一人で降りたら怖いもん、とかわけわからんことを言っていた。
あと少しで頂上という場所まで来た。
おかんを待っていると周囲の登山客が口を揃えて話しているご来光とやらに間に合わない。
おかんに先に行くねと言って、先に頂上を目指した。
頂上についた私は、周囲の登山客がご来光だーとザワザワし始めたため、大人の間をかき分けて、一人でご来光を観た。
待てども待てどもおかんがこない。
おかん、まさか、先に下山したのか〜。
さっき登ってきた登山道を見下ろした。かさを被っている人を探した。こんな時にかさが役に立つとはー。
おかんが見当たらない。
すると大声で「ユキミー」と叫ぶ声がした。
声の方を振り向く間もなく、おかんは見つかった。
フェイスタオルをダチョウ俱楽部の上島竜兵なみに頭からかぶり、首で結び、なぜか子ども用のミッキーの帽子をデカイ頭に置いている変な人がいた。
服装は、遭難した際に一番目立つようにと、おかんが張り切って購入していた、蛍光イエローのカッパだ。
間違いなくおかんだ。
外国人観光客に写真をせがまれ指一本立ててるのは間違いなくおかんだ。
なぜか泣きながら、大声でユキミを呼んでいる。
もちろん一回スルーするよね。
ただ、もう逃げられるわけないよね。
両手を広げて走ってくる。
なんか、一回逃げてみたくなり、走って逃げた。
やっぱりおかん大声出すよね。
さらにみんな注目するよね。
覚悟決めたよ私も。
仕方ないからおかんと握手したよ。
そしたらおかん歌ったよ。
童謡の一度は聞いたことある「富士山」のうた。
あーたまーを雲の〜上に〜🎵
なぜか周りから手拍子きちゃうよね。登山客特有の一体感ってヤツ。
マジ勘弁して!
おかん、NHKのど自慢に出たほど人前で歌うのが好きだから調子乗るよね。
それで、おかん、サイズを完全に間違えたミッキーの帽子とほっかぶりのタオルを被りながら、言っちゃうよね〜。
富士山サイコー‼︎
一本指バンバン立てる〜。
外国人パシャパシャ写真撮る〜。
日本の恥や。私が代わりに謝る。ごめんジャパン。
おかんサイアク!
さすがにミッキーの帽子だけは取って欲しい。
「どうしたん。その帽子。」と聞いた。
おかんに聞くとかさは途中で失くした。弟が被りたくないと言ったダサい帽子がリュックに入っていたため被った。
ただ、耳があまりに寒いから、タオルでほっかぶり状態にした。とのこと。
帽子とタオルを剥ぎ取った。
おかんに、下山ルートを伝え、早めに降りてくるよう私は伝え、先に降りた。
途中でおかんを待ち、おかんが降りてきてるのを確認し、父の待つ駐車場までおりた。
だが待てども待てどもおかんがこない。
父親が焦る。
さすがに私も責任を感じる。
ただ、ラッキーなことにおかんは有名人や。
おかんの特徴を伝えるだけで、みんなが情報をくれる。
最悪なことに、私は「おかんの子どもやー」なんて言われて握手される。
おかん、途中で下山ルート間違えとるー。
最後まで迷惑をかけるおかんや。
みんなでおかんを迎えに行ったよ。
よくわからんけど、おかん発見した時には、知らんおっちゃんと大笑いしながらスイカ食べてたよ。
父が、私におかんに声かけるように言ったよね。
私も拒むよね〜。
そしたらおかんがうちらに気づいて、大声で呼ぶよね。
家族全員スルーしたわ。
おかんサイコーや!
おかん、私のために頑張って登ってくれたんやな。
ありがとう。
私はハッピー。
みんなハッピー‼︎